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挙式は円滑に進み、誓約…牧師が二人に愛の誓いを確かめる。当然俺と鈴がそれに答えることで誓いが成立すると、指輪の交換となる。結婚の誓いの証としてお互いに指輪を交換するものだが、その指輪は…打ち合わせで見ていたリングピローよりも明らかに大きな物の上に鎮座していた。
やたらとパールで飾られたところが金をかけている風で、何だか鈴の雰囲気とは違っているが、鈴がベール越しに嬉しそうに笑っているのを見て、俺が作っても良かったな…と少し後悔する。残念ながら、そんなアイデアは思い浮かばなかった。
それから、指輪を手に取りながら粗い針仕事が目につくと、これ以上サイズの小さい物は早織と詩織には縫えなかったのだと悟る。
俺の左手薬指にリングが通ったとき、このままの流れでキスさせてくれと思ったが、次のアナウンスを待つ。
そしていよいよ…距離が離れているとタコチューになるので、ドレスの中に足を踏み入れて近づくと、ベールアップ。めくったベールは鈴が美しく見えるよう最後まで丁寧に伸ばして下ろすことを心がけた。
キスの時間はゆっくり3秒が理想だと、リハーサルの時点で言われたときには笑いそうになった。その理想の根拠が‘挙式の中のハイライトともいえる誓いのキスの瞬間を写真に収めたいと思うゲストも多いし、カメラマンにも必要な時間だ’と言うのだから、誓いも何もあったもんじゃない。
俺は鈴の肩に手を置き、しっかりと見つめ合ってから口づけ…心の中で‘い~ち、に~~い、さ~~~ん’…念のためもう1秒‘よ~~~~ん’と数えた。
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