結婚式

8/18
前へ
/82ページ
次へ
神聖な場にふさわしい静寂が広がったところで唇が離れると、一気にざわめき立つ参列者に、鈴が急いで背を向けようとするので手を取る。 そこからありふれた終わりを迎えた挙式後、鈴は控え室でベールを取り、ブーケと同じ白とブルーの花を、編み込んだ髪にちりばめて披露宴が始まる。 「ティアラよりこの生花で正解だな。とても似合ってる、鈴」 「ありがとう。またあのイングリッシュガーデンに行きたいな…先週行ったばかりだけど」 「何度でも一緒に行こう。あそこで結婚式が出来たら良かったのに残念だ」 あのガーデンの管理は美術館と同じく都だった。あちこちのルートから、あそこで結婚式が出来ないものかと掛け合ってみたのだが、どうしても許可が下りなかったのだ。 それでこの都心のNinagawa Queen's Hotelという手近なところで結婚式を行うことになった。 俺たちの家にはすでに鈴の荷物が入っており、何度か寝起きを共にしながら足りない物を揃えている最中だ。鈴の着物が母も驚くほどあったので、沖田の一部屋を鈴の着物部屋にしてもらったのは想定外だが、両親も鈴も喜んでいるのでいい。 鈴と入場しながら、今日の和装は鈴のおばあさまと母親だけだな…と思う。母親は帯のリメイクをしているらしいから、鈴の着物好きはおばあさま仕込みといえど、母親も和物が好きなのだろうと推測できる。やっぱり血の繋がった母娘だよ、鈴。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3428人が本棚に入れています
本棚に追加