(二)

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 彼は「いつ見ても大した装置がないなぁ。これじゃあまともな実験などできないじゃないか」といいながら、キャビネットのドアを開けて中の箱を見たり、資料のファイルを取り出したりして中をパラパラめくっていた。  そして私の近くのキャビネットに近づいたとき、彼は私の姿に気づき「うわっ!」と声を上げて驚いた。  その大声に私も思わずびっくりしてしまった。 「もしかして、準備ってもうやってくれた感じ?」  私が恐る恐る聞くと、彼は「とっくに」とぶっきらぼうに答えながら私の隣のキャビネットのガラス戸を開けて棚の中身を出したりしまったりを再開した。 (続く)
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