政府の奇策

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政府の奇策

政府の政策がことごとく失敗し、不況は続いていた。 救済政策として国民への給付金を行うが一時的なしのぎで、リストラや廃業など多くの人達が無職となった。 今回政府が新しい試みとして、無職の人達への給付金及び職をあてがう抽選会をする事になる。 マイナンバーカードで国民は把握され、TVで抽選会がおこなわれた。 TVを電気屋で見るこの男は桜庭(さくらば)と言う。 今まで自分の意思をほとんど表示する事なく、誰かのいいなりで流れながら生きてきた。 勧められた一流企業に入社し仕事をしていたが、仕事でも上司の言われるまま、全く関係ない罪を押し付けられ最近リストラされたばかりだった。 「はぁ……。仕事どうしよう……。何の仕事についていいかもわかんない。お金もないし……」 真面目ではあるが、自信もなくまた熱い意欲もない。 肩を落とし、くたびれた顔が電源が入ってないブラウン管に映る。その姿を見て、また気落ちしていた。 TVでは、政府の初の試みに司会者も番組も騒ぎたて明るい音楽が流れている。国民みんなが注目している為、自分以外にも電気屋のTVに沢山の人が群がっていた。 桜庭以外は自分のナンバーカードをそれぞれが持ち、今か今かと期待した顔をしていた。 いよいよ抽選会が始まった。 工場作業員や農業、漁業など幅広い分野からあてがわれる。桜庭の隣りの男は、漁業が当選したらしい。 「え!俺船酔いするから無理だ。断るか……」 この抽選は当選しても拒否する事もできる。職と一緒に支度金がでるが、それも拒否という事になる。 俺は何でもいいから当選したかった。職も何をしていいかわからないし、あてがわれた方が俺は何も考えずに都合がよかった。 ーー何でもいいから当たらないかな〜。当たれば職もお金も貰えかとか最高すぎる。ただ1等だけは嫌だ。ま……当たるわけないか……。 俺はよくわからないうちにリストラされてしまった自分は運が悪いだけだと思っていた。 「俺運悪いから、大丈夫か……」 俺は抽選に余程期待しているらしく、自分の考えに自笑した。
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