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①
「俺の人生、どうしていつもこんなんだよ。不公平だ」
「そんなことないって」
「じゃあどうして彼女の誕生日にミシュラン二つ星のレストラン予約して、婚約指輪買ってプロポーズしたのに、プロポーズ断られるは、本当は別に彼氏がいて俺はただのセフレだって言われ、今後一切連絡するなって振られないといけないんだ!。俺だって仕事も恋愛も一生懸命頑張ってる。だけど俺はいつも不幸くじばっかりだ!」
バーのカウンターで酔い潰れて泣きながら毒を撒き散らしているのは、俺が高校の頃から一途に思い続けている初恋の相手『律』
こいつは不幸体質なのか、高校の頃からずっとこんな感じだ。
そして宥めるのはいつも俺。
「……。不幸な1日だったな」
「不幸でまとめるな」
「じゃあ本音を言わせてもらうと、お前、見る目ないからな」
「ずっと恋人がいないお前に言われたくない」
「ずっと付き合っても振られてばかりのお前に、言われたくない」
「ぐ……。親友を慰める気はないのか…海里の馬鹿野郎…えぐ、えぐ……」
律はすぐに泣く。
そこが可愛いところでもある。
「で、今回はどうして欲しいんだ?」
律は自分に不幸が降りかかると、決まって俺に何か要求してくる。
「……。それは、あの…その……」
さっきまぐでぐでに酔っ払って机に突っ伏しながら泣いていたのに、急に顔を上げるとシラフのような顔をして、何かを言おうとしているが言えず、もじもじしている。
「なに?高級時計買ってくれとか言わないよな」
「うん…」
「婚約指輪買ったから金欠で、金貸してくれとか?」
「!海里だけには絶対に言わない」
俺だけに言わないって、なんだよそれ。
もっと頼ってくれよ。
もっと頼って、それから……。
「じゃあ何?」
「あの、その……。俺んちで飲み直さない?」
「え?そんだけ?」
「それだけじゃないけど、ここでは言いにくい…」
律はなぜだか顔を真っ赤にして下を向いてしまった。
外で話すのは恥ずかしい?
「別にいいけど」
タクシーに乗り込んで、行き慣れた律の部屋に向かうが、律は何も話さず沈黙が流れた。
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