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『めぐみが寝込んだら、俺が看病してやるよ』
皆で飲んだり歌ったり、カラオケ店でワイワイ遊んでいた。そんなさなか、彼は真顔で言ったのだ。
私はその時、ドリンクバーにいた。
ミックスジュースをグラスに注ぎながら彼に見向く。いつものように、ジョークの前振りか何かだと思った。だから何も言わず、その真顔が崩れるのを待っていたのだ。
だけど、彼の表情はそのままだった。
私は半秒ほどぼうっとして、グラスからジュースが溢れそうになったところで我に返る。
相馬くんはそこで初めてクスッと笑い、なみなみと注がれたミックスジュースを私から取り上げた。こぼれないよう慎重に唇に近付け、ごくりとひと口含む。
『美味いな』
とても静かな口調。
私は声を出せず、ひたすら頷くのみ。童顔の相馬くんが、どうしてかとても大人びて見えたから。
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