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――めぐみが寝込んだら、俺が看病してやるよ。
相馬くんとの関係を、これまでと違うものにしたくない。だから、特別な意味の言葉とは受け取らず、深く考えることもしなかった。
真顔で、いつもの彼らしくもない、静かな口調。本当は、分かっていたのに。
結局、私は風邪を引くに至らず、相馬くんの看病も必要としなかった。
『まったく、頑丈な奴だな』
次の日、キャンパスで顔を合わせた彼は呆れていた。少しだけ残念そうに、でも、自然に声をかけてくる。いつもの童顔の、いつもの屈託の無い笑顔に私はほっとして、肩を並べて歩いた。
それからも仲の良い友達として彼と大学生活を過ごし、卒業を迎えた。頑丈な私は風邪ひとつ引かず、一度も寝込むことなく――
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