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一人暮らしをするようになって八年。初めて風邪を引いて寝込んだ。
アパートの小さな窓。カーテンの隙間から、冬空を眺めている。
(もう若くないのかも……なんて)
大学時代の私は、丈夫なのが取り柄だった。たとえ体調を崩しても、こんなふうに寝込むなんてことは無い。細っこいくせに鋼のような体力の持ち主だと、サークル仲間にも不思議がられた。
「相馬くん、元気してるかな」
痛む喉からかすれた声を漏らし、ひとりごちる。
サイクリングサークルで、特に仲が良かった。少年のような童顔で、旅と自転車が大好きで、旅先での面白い話を上手に楽しく聞かせてくれた。男とか女とか、全く意識せずに付き合えた、唯ひとりの純粋なボーイフレンド。
そう思っていた。
そのはずだった。
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