彼女

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 その声は、よく知っていた。その顔も、その香りも、そのすべてを。男性なのに少し高めで通る声。長いまつ毛に少し切長の目。甘い、桃の香り。  ああ、そうか。 「ゅ、シュゥ」 「あと、俺の妹の名前を気安く呼ぶな」  あの桃の香りは、姫乃から香るそれと、よく似ていたんだ。  シュウトが持つ笛が私の頭に強く叩き込まれたが、3度目の鈍い音はもう聞こえなかった。
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