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時間あわせ(前日譚)
教室は、葬儀場のような暗さで満ちていた。
クラスメイトが自死をした──
首吊りだとか、飛び降りだとか、様々に噂が拡がっていたけど、真実は微妙に伏せられていた。おそらく、肉体に傷が残る方法ではなかった。とすると、薬か、溺死か、私にはそれぐらいしか思い浮かばなかった。
見えないところで、その子はいじめられていたらしい。容姿は悪くない男の子だったし、成績も良い方だった。でも、いじめは理由なく行われる場合がある。どんなやり方で加害者が彼を苦しめていたのかは分からない。私を含むクラスメイトたちは、自死の報告を受けるまで、彼がいじめられていたことを知らなかった。
先生は、さも自分が責めを負うような顔でこの話をした。そこで加害者の名前は明かされなかった。そいつらのことも学校は守らなければならないのだろう。理不尽なことだけど、大人たちが決めたルールを変えることはまだできない。
教室を見渡すと、他の子は眉根を寄せながら話を聞いているのに、薄ら笑っている男子が三人、明らかに身体を震わせている女子が一人いた。その四人が今回の加害者であろうことは勘で分かった。彼らはよくつるんでいる。中でも主導権を握っている男子はみんなが知っている。
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