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「えーっと、ちょっと待っとってね。機械を取ってくるから」
おじいさんは再びゆっくりと奥に消えた。
そう言えば、と思い出す。たしか、ヘアカットのテクノロジーも進んでいるとニュースになっていた。ロボットが短時間で理想の髪型にしてくれるらしい。
こんな古くさいお店に、そんな最新の機器があるのだろうか。
と、ぼんやり考えること十分。ようやく、おじいさんは戻ってきた。スピード仕上げとは一体? と笑いたくなる。
「すまんねぇ。こいつの調子が悪くて」
運ばれてきたのは、錆びつき、継ぎはぎだらけの、見たことがない機械。ニュースにあったロボットとはまったく違うかたち。
「それ、なんですか」
それに髪を切られたくない、と願いながらたずねる。
「わしが作ったカットくん初号機さね。二号や三号もいるけど、こいつが一番いいんだ」
願いは叶わなかった。おじいさんは俺のうしろで機械をいじりだした。
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