さらに一緒に

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 Livey《ライヴィー》、20年近くにわたり続き、そしてその開発エンジンが時代に沿えなくなった事でサービスが終了したソーシャル機能を持ったAIペットコンテンツ。  熱狂に沸いた全盛期に比較すれば過疎化は否めなかったが、終了間際まで愛情を注ぐ飼い主の数もそう少ないものではなかった。  そして、そう言った飼い主には小さな奇跡が起こっていた。  公には一切知られていない前代未聞の珍事件、数千万にも及ぶ稚拙なAI達の並列処理と様々な世界中のコンピュータがそれに協力した事実。  その結果が恵子の日常に残っている。 「ノっ君? 何してるの? 」  奇妙なポーズをとったまま動きを止めたオカメインコの様な生き物は、慌てて自然な姿勢をとるとべつに―と答えた。  そう、喋った。そしてこの声は彼女にしか聞こえない。姿もそうだ。  ノっ君は恵子が小学生の頃から付き合っているLiveyなのだ。サービス終了したコンテンツのキャラクターが彼女の世界にだけ存在しているのは何もペットロスから発症したイマージナリーフレンドと言う事ではない。  今や電気信号に姿を変え、恵子の脳内に存在するノっ君は間違いなく実在するのである。  最近のノっ君はたいてい恵子の視界に入らない所で何かしている。だがせわしない気配がするうえ、時々抑えた声の断片が聞こえるので何をしているのかはなんとなく察しがついていた。
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