🎄否!🎄

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シャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキシャキ… キャベツの千切りの音が工場内に響き渡る。 キャベツを切るのは、従業員の新人。彼らの包丁慣らし。つまりは板前修行で言うところの、追い回し・下積みの練習の様なもの。仕込みの補助になる。練習用キャベツの千切りは、そのまま、袋に詰められて、コンビニで安価で売られる。 それら材料の仕込みをマスターした者が盛り付けを担当し、 さらに修練を積んだ者だけが、焼き場、揚げ場に付き さらにその兄貴分が蒸し場、煮方に回る。 それらをすべてを習得したわずか0.01%の選ばれし者をリーダーと呼ぶ。 包丁の刃物慣らしが終わった者から、弁当の仕込みの野菜切りにまわる。 新宿工場は三流派に分かれる。中華料理武門、麺類武門、惣菜弁当武門。部門とは書かず、武門と書くのは、武道の精神性に重きを置いているからに他ならない。 その三武門はさらに商品ごとのリーダーがおり、リーダーたちは各々、担当弁当、担当商品の試食を、ひろ工場長の元へ運ぶ。味の確認を求めにやってくるのだ。 「師父〜!中華丼持って参りました〜!」 「(いな)!不合格!」 「師父〜!ハンバーグ勉強持って参りました〜!」 「否!不合格!」 「師父〜!卵とじうどん宜しくお願いします!」 「否!不合格!」 「否!」「否!」「否!」「合格!」「否!」 「否!」「否!」 本日唯一の一発合格は"ねぎ塩焼きそば"ただ一つであった。 ねぎ塩焼きそばリーダーが誇らしげに()える! 「ははー!ありがたき幸せ!ねぎ塩焼きそば製造開始ダァー!」 「おお〜!」 地鳴りのような歓声と同時に塩焼きそば武門の鍋が振られ、一気に工場が活気づくのだった。
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