第一歩。

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第一歩。

こっち、見てくれないかな。 彼ー岸野葵のいる総務部に足を運ぶたびに、 僕は彼に向かって念を送っている。 誰にも言えない気持ちを傾けるように なってから、もう半年が過ぎた。 新卒で会社に入ってすぐ、 エレベーターの中で彼を見たある朝から、 僕は彼に片想いしている。 つぶらな瞳、小さく肉厚な唇。 儚げで繊細な雰囲気に、一目惚れしたのだ。 幸い僕の同期で彼と同じ部署の佐橋雄大から 彼の話を定期的に聞くことができていて、 近いうちに彼と話をしたい、 その時は彼と目を合わせて笑い合いたい と思っていた。 そんな僕の密かで健気な願いは、 突然、意外な形で叶っていくことになる。
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