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そこまで考えたところで、電車が駅に着いたらしい。プシューッとドアが開いた。
その前に『まもなく南公園前、南公園前に到着します』というアナウンスがあったはずだが、目の前の男に意識を向けすぎて、聞き逃していたようだ。
とはいえ、慌てる必要はなかった。本来ならば乗ってくる客より先に降りるべきだが、どうせ乗り込む者も少ない駅だ。先ほど考えたように、ゆっくり立ち上がっても十分に間に合う。実際、私と同じタイミングで立ち上がる乗客もチラホラいたのだが……。
おおいに慌てる者が一人いた。
「あっ、南公園前だ!」
今の今まで眠っていたハンサム男が目を覚まし、一言叫んだかと思うと、ガバッと立ち上がる。
開いた扉は彼のすぐ横であり、急ぐ必要は全くなかったのに、脱兎の如き勢いで電車から飛び出していった。
彼の慌てぶりが面白かったらしく、クスクスという笑い声も聞こえてくる。私は呆気にとられてしまうが、そんな場合ではなかった。モタモタしていたら、私自身が降りそびれるではないか。
そう思って急いでドアへ向かいながらも、視界の端に映り込むものを無視できず……。
「ちょっと、お兄さん! これ、忘れてますよ!」
車内に置かれたままだったボウリングバッグを拾ってから、彼を追うようにして、私も南公園前駅で降りるのだった。
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