5. 油断大敵

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 …………見られ……てた?  クラスの誰かも同じタイミングで映画館にいたのか。  それで、休みの日に私と彼が二人で映画を観る仲だと知り、付き合ってると噂に?  しかも、昨日の今日で、クラスのみんなまでもうその噂が広まっているのか。 「仲良さそうにしてたって? もー、彼氏できたなら教えてよね」 「ね。友達なのに水臭い。まさか柚乃のタイプがあんな感じだとは思わなかった。地味メン好きだったなんて意外〜」  彼氏ができたなら教えてよと言いつつ、その相手が三笠くんだと知った二人のこの態度。  くすくすという笑い方は、まるで私たちを下に見ているかのようだ。  たしかに、この二人の歴代彼氏はハイスペイケメンばかりだったと思う。  でも、三笠くんの良さはそんな、ステータスや顔面偏差値では測れない。  何も知らずに見下されるのは、ただただ不快である。  ……だけど、この二人にはきっとそんな話は通じないんだろうな。  そこにさらに、お互いとあるアイドルグループが好きで話が合ったんだ、なんてことは言えるはずもないし。 「…………あのさ、悪いんだけど、三笠くんとは別にそういう関係じゃないよ? この前映画館で会いはしたけど、偶然会っただけで一緒に行ったわけじゃないし」  映画館で見たという目撃証言が具体的に何を見られていたかは不明だが、一か八か。  一旦、偶然会っただけと押し通してみよう。 「え? そうなの?」 「うん。私もビックリしたよ。三笠くんって映画とか観るんだーってなって。ちょっとだけ話したりしたから、そこを見られて誤解されたのかも?」 「ほんと?」 「ほんとほんと」  二人は私が嘘をついてるんじゃないかとじーっと目を細めて見つめてきた。  そして数秒ほど見つめられたのち、私の嘘を信じてくれたようで、くるみは「なあーんだ」と残念そうな声を漏らした。 「せっかく柚乃から恋バナが聞けると思ったのになあ」 「まあでも良かったんじゃん? あのメガネくんとの恋バナなんて聞かされてもこっちが困っちゃうし」 「それもそっか。アレがかっこいいとか言われても共感できなさそうだもんね」 「…………あ、はは……」  そんな話に「そうだね」と同調したくはない。  でも、「そんなことないよ」と否定して二人との仲を気まずくしてしまう勇気も、残念ながらない。  私は適当に笑って誤魔化した。  そんな時、ガラッと教室の扉が開いた。
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