6人が本棚に入れています
本棚に追加
「!」
見ると、そこには三笠くんが立っていた。
……もしかして今の、聞いてた?
今来たばかり?
それとも、今の話を聞いてしまった?
彼が一体どこから聞いていたのかが分からず、私は困った表情をする。
だが、当の本人である三笠くんは一度も私の方を見ず、真っ直ぐに自席に向かって歩き、クラスのみんなからの視線を浴びつつも我関せずといった様子で席に座った。
彼が席に着くと、クラスのみんなもパラパラと彼から視線を外していった。すると程なくして、教室内はまたがやがやと雑音が響き始める。
「まあじゃ、また変な噂が流されないように気をつけなね?」
「……うん、分かった」
「あと、噂を抑止するには完璧な彼氏を作るっていう方法もあるからね? 必要なら紹介するから言ってね! 今の彼氏が社会人だから、大人の男性とか紹介できると思うし」
「……考えておくね。ありがと」
くるみと聡香が言いたいことを言ったところでチャイムが鳴り、二人は笑って自席に戻って行った。
──その夜、私は三笠くんにMINEでメッセージを送った。
『今朝はごめん』
もし彼が何も聞いていなければ『何のこと?』と聞き返してくるはず。
聞いたか聞いてないか。
それを確認する意味も込めて、まずは謝罪のメッセージだけ送ってみたのだ。
すると、彼から返ってきたのは短く一言。
『こっちこそごめん』
……?
どうして三笠くんが謝るの?
私の謝罪の意図をきちんと受け取ってくれたのであれば、彼は教室での会話を聞いてしまっていたのだろう。
そうだと仮定しても、三笠くんに謝られるようなことは何もないのに。
どう返事をすればいいのか分からず、その夜はそのまま眠りについた。
最初のコメントを投稿しよう!