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策も浮かばず、仕方なく腹を括る覚悟を決めたところ。
私の回答に被せるように発言したのは、ちょうど他の場所の掃除を終えて教室に戻ってきた三笠くんだった。
「え……」
「それ、僕の」
突然の三笠くんの登場に、その場にいた全員がぽかんとして一瞬時が止まった。
だが次の瞬間、ワッと堰を切ったように教室内にどよめきが起きた。
「え、え、マジ!? これ男性アイドルだぞ? 男のお前が好きなわけ?」
「うん」
「え、ガチ? お前こういうの好きなの?」
「まあ、うん」
桐島くんたちはバババッと質問を重ねていく。
クラスの中でいつも孤立して暗い印象の三笠くんがアイドル……しかも男性のアイドルグループを好きだと知れば、誰しもがそういう反応をしてしまう。
しかもCDを拾った桐島くんたちは、さらに三笠くんを鼻で笑って面白がった。
「うわ、やば。意外すぎるんだけど。地味なやつが好きになるアイドルってどんなんだよ」
「いやむしろあれだろ。自分と違いすぎて憧れちゃったとかそういうやつ」
……ほんとふざけている。
桐島くんたちに、三笠くんを馬鹿にする権利なんてないのに。
好きな物を好きと言って何が悪いの?
私は心の中で激しく憤りを覚えたその時。
桐島くんたちを一蹴するかのように、三笠くんはmeteorへの思いを熱く語り始めた。
「これ、グループ名は『ミーティア』って読むんだよ。六人組で、下積みが長くてデビューは遅かったんだけど、その分パフォーマンスがめちゃくちゃすごいよ。歌はうまいし、何よりダンスがキレッキレで揃ってて、全員高身長だから見栄えもすごい。それに、ファン思いだし、メンバー同士の仲も良い。憧れ? あるに決まってるでしょ。男の僕でもハマっちゃうくらい、カッコいいグループなんだから」
ここまで一息。
なんという肺活……じゃなくて、熱量。
……でも分かる。
meteorの良さは、どんなに語っても語りきれないのだから。むしろ短くまとめた方だとさえ思う。
「お、おう……?」
「桐島くん、MINE交換しない? meteorの動画送らせて」
「あ? いやいや、俺は別に」
「あんな風に馬鹿にしておいて、彼らのパフォーマンスは見ないなんて、そんなかっこ悪いこと言わないよね?」
「は?」
「馬鹿にするのは、彼らのことをちゃんと知ってからじゃないと。……まあ、ちゃんと知ったら、馬鹿になんてできないと思うけど」
「なっ……!」
「ほら、携帯出して」
桐島くんたちは、まんまと三笠くんに言いくるめられ、MINEを交換していた。
交換した途端、彼は五つも動画を送ったようで「はえーよ!!」なんて怒られてもいたけど、そんな会話をしてくれたおかげで、教室内はいつの間にか元の和やかな空気に戻っていた。
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