8. 驚きばかり

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8. 驚きばかり

 昨夜は全く寝付けなかった。  後味も悪く、それにどうしても、去り際の三笠くんの態度が気になってしまったからだ。  ……やっぱり嫌われちゃったのかな。  それしか理由が浮かばない。  でも正直、嫌われたと考えるとものすごく辛い。  朝、昇降口に着いて上履きに履き替え、教室まで足取り重く向かう。  すると、前方不注意で誰かにぶつかってしまった。 「わ」 「おっと」  反動で後ろに倒れそうになるも、ぶつかった誰かが私の腕を掴んで助けてくれた。 「す、すみません。ありが……」  ありがとうと言いかけて、相手の顔を見た私は驚愕した。  ……え、誰このイケメン。  そこには見覚えのないイケメンが立っている。  でもどこか、meteorのメンバーで私の推しであるランくんに似ている気もする。  ……こんなイケメン、うちの学校にいたかな?  私が不思議に思っていると、相手から声をかけられた。 「大丈夫? 夏川さん」 「……?」  ……今の声は聞き覚えがある。聞き間違うはずがない。 「三笠……くん?」  起きながら夢でも見ているのかと、何度も強く目をこする。  それでも、何度瞬きをしても、何度頭を振っても、目の前の姿は変わらない。 「ははっ。そんなに驚かなくても」  私が驚きっぱなしでいると、三笠くんはポリポリと右頬を掻いて少し照れ臭そうにした。 「だってその髪……それにメガネは!?」  長めの髪にメガネが三笠くんのトレードマークだったのに、それがどうしてかなくなっている。  髪はさっぱりと短髪になり、前髪もワックスで軽く上がっている。  それにメガネもなくなり、今まで隠れていた顔がハッキリと見える。 「髪は昨日美容院で切ってきたんだ。メガネはコンタクトにした」 「……み、三笠くんってそんな顔してたんだね」  ……いや違うでしょ私! 素直にカッコいいって言いなさいよ!  あれでも、じゃあ昨日急いでるって言ってたのはただ美容院に行く予定だったから、ってこと?  今普通に話してくれていることを考えると、避けられたっていうのは私の思い過ごし? 「うん。ちょっとまだ、自分でも見慣れないんだけど」  三笠くんってこんなにカッコよかったの……?  長く伸びた前髪とメガネの奥にこんな整った顔が眠っていたなんて、とんだ原石が近くにいたものだ。
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