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「夏川さんもハマってくれてたんだね。嬉しいな」
「え……えっと……?」
「前々から、周りに深く話せる人がいなくて寂しかったんだよね。よかったら今度meteorについて語り合わない?」
「え…………? む、むりむりむりむり!」
『meteorについて語り合う』
その内容には惹かれる。
うん。ものすごく惹かれるけれど、簡単には受け入れられない。
何せこのことは周りには秘密なのだから。
「だめ?」
「むりに決まってるでしょ!? なんのために秘密にしてると......。学校で語ったりしたらバレちゃうじゃない」
「じゃあバレなきゃいい? それならMINEでも良いんだけど」
「え、えぇえ……?」
必死で首を横に振ったのに、意外にも彼は諦めない。
直接会話ができないなら、チャットアプリのMINEでやり取りしようと提案してきた。
正直それなら……まあ……。
三笠くんはスラックスのポケットから携帯を取り出して連絡先交換の準備をした。
私は、MINEならいいかと考えて、連絡先交換に応じることにした。
IDを表示して、彼の目の前に差し出す。
「……はい。これ私のID」
「ありがとう」
彼はすぐにIDから友達登録をしてくれて、ポコン、とスタンプを送ってきた。
見るとそれは、猫の可愛いイラストのスタンプ。
寡黙で地味なメガネ男子。
前髪も長めで暗い雰囲気が漂っている彼。
イメージで言えば、顔文字や絵文字を使わずに淡々とした文章を送ってきそうなのに、まさかである。
meteorが好きというのも意外だったが、こんなに可愛いスタンプを使うというのも意外で、私はそのギャップに思わずくすっと笑ってしまう。
「可愛いねこれ。ネコ好きなの?」
「あ、うん。このイラストレーターさんの絵が可愛くて、いくつか持ってるんだ」
「へえ」
「じゃあ、あとでまた連絡させてもらうね」
そう言って三笠くんは手に持っていたキーチャームを返してくれて、そのまま行ってしまった。
──その夜、三笠くんは本当にMINEでメッセージを送ってきた。
これまでお互い、meteorについて思う存分語れる相手がいなかったからか、やり取りはかなり白熱した。
meteorにハマったキッカケ。
meteorの中で誰が推しか。
meteorの好きなところ。
……とまあ、語り始めたら話題が尽きない。
昨日までほとんど話したことがない相手だったのに、同じものを好きと知るだけでここまで距離が縮まるとは思ってもみなかった。
この日は深夜二時頃まで、止めどなくメッセージを送りあったのだった。
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