3. 友達よりも

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3. 友達よりも

「ふぁ〜あ」 「あれ珍しいね。寝不足?」  昼休みに入り、教室で憚ることなくあくびをしてしまい、友達のくるみがすかさず聞いてきた。 「ああうん。ちょっとね」  ちょっとどころではない。  三笠くんと夜遅くまでMINEをした結果、だいぶ寝不足である。  授業中も瞼が重すぎて、時折意識を失いかけるほどに。 「なになに? 彼氏でもできた?」  寝不足というキーワードがいきなり恋愛話に発展するとは恐れ入る。  くるみはわくわくと少し期待するような眼差しで私を見てくるが、そんな期待をされても困ってしまう。実態はただアイドル語りしていただけだから。 「お、柚乃にもついに?」  そこに、もう一人の友達である聡香(サトカ)まで会話に混ざってきた。私はとにかく否定する。 「いやいやそんな。ただちょっと遅くまで……中学のときの友達とMINEしちゃっただけ」 「中学のときの友達〜? 本当に〜?」 「本当だよ」  ……「誰と」も「何を」も本当のことは言えないので、咄嗟に『中学の友達』と嘘をついたのは我ながらグッジョブだと思う。  そのおかげで、それ以上は詮索されずに済んだ。  そしてすぐ、今度はくるみ自身の話題に切り替わる。 「てか、わたしこの前大学生の彼氏ができたって言ったじゃん? あいつ、束縛が酷かったから別れた」 「マジ? この間付き合い始めたって言ってなかったっけ?」 「二週間前かな。まあでも理由が理由だからしょうがなくない?」 「そうだねえ」  いまだ誰とも付き合ったことのない私は、恋愛の話になると何も言えない。  いつもこういう話になると私は黙り、もっぱらくるみと聡香が二人で会話をする。  そしてその流れで…… 「てことで柚乃! 今日の放課後、この前雑誌に載ってたあのカフェにでも行かない? またダメな男捕まえちゃったわたしを慰めて〜」  ぐりん、とくるみはこちらに顔を向けて誘ってきた。  彼女は大きな目に陶器のような白い肌でめちゃくちゃ可愛いのだが、自他共に認めるくらい男運が悪い。  今回は度がすぎる束縛で、前回は二股をかけられて、その前は確か……細かく割り勘してくる人だっけ?  まあとにかく、そんな男ばかりだから付き合っても別れるのが早くて、別れるたびにその捌け口役となるのが私である。  悲しいことに、くるみと仲良くしている女子はみんな彼氏持ちで放課後は彼氏との予定が入っているから、相手をできるのが私しかいない、という意味での私だ。
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