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5. 油断大敵
────それからも、私と三笠くんはよく二人で出かけた。
meteorは最近、いろんなテレビ番組に出演したり、新しいCMが決まったり、コラボ商品が出たりと忙しい。
そんな話題に尽きない彼らを追うからこそ、私と彼の間の熱量も冷めることを知らない。むしろ段々と加速していっている。
それに、何度も出掛けるうちに、初めは感じていた緊張もなくなっていた。
……だから、油断していた。
三笠くんと出掛けるようになって二ヶ月くらいたった頃。
meteorの中でも私が一番推しているランくんが出演する映画を観に行った休み明けの月曜日。
いつも通り登校して教室に入ると、一瞬で空気が変わったのが分かった。
みんなの視線が即座に私に突き刺さったからだ。
……え、なに?
「おっはよーう柚乃」
「おはー」
「お、おはよう」
違和感はありつつも席に着くと、くるみと聡香が近づいてきていつものように挨拶をしてくれたので、こちらも普段通りに返す。
そして、周りを気にしながら小声で聞いてみた。
「ね、ねえ。何かあった? みんな私のこと見てる気がするんだけど……」
しかしそれに対してくるみは、声を大にして返事をした。
「聞きたいのはこっちだよ! ……ねえ柚乃、いつからあのメガネくんと付き合ってたわけ?」
「…………は?」
どくん、と心臓が跳ねる。
「メガネくんって……」
どうしよう。声も震えそうだ。
「なんだっけあの〜、いつもぼっちで根暗のメガネくん」
「あんたクラスメイトの名前も覚えてないの?」
「えへ。だって印象薄いんだもーん」
「あれだよあれ。三笠だっけ? 今日はまだ来てないみたいね」
『メガネくん』と言われた瞬間、そんな気がした。それでも念のため確認したのだが、やはりと言った結果。
この際、くるみたちの三笠くんに対する悪口は一旦置いておく。それよりもまずは、事実確認だ。
「三笠くんと私が……なんて?」
「だからぁ、付き合ってるんでしょ?」
「……どうして?」
「そりゃ、二人で映画観に行ったんでしょ? 映画館にいるところ見たって噂になってるよ」
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