7人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
1. ヒミツがばれた
…………終わった。
「……これ、夏川さんの?」
「…………うん」
高校二年の二学期に入ったこのタイミング。
私──夏川 柚乃は、後ろの席の地味なメガネ男子──三笠 類に、誰にも知られてはいけない秘密を握られてしまった。
その秘密は今まで必死で隠してきた。
友達にも家族にも、まだ誰にも言ったことがない。
それなのに、まさかこの、一度も話したことがないようなクラスメイトに知られてしまうとは思わなかった。
……あー、彼の手の中にすっぽりとおさまっちゃって。
それは、某有名アイドル事務所の男性アイドルグループ『meteor』のグッズである。
基本的にはスクールバッグの中に入れているし、もし万が一取り出したときに友達に見られても大丈夫なように、それ単体ではよくよく見ないとアイドルのグッズだなんて分からないキーチャームなのだが。
どうしてか、彼には何のグッズなのかバレてしまって。
「これ、meteorのグッズだよね?」
放課後、駐輪場に着いてバッグの中を探したら、キーチャームが見当たらなかった。
どこかで落としてしまったかと教室まで歩いてきた道を探しながら戻ったところ、教室には彼一人が立っていた。
あまり話したことない相手だったが、一応キーチャームを見ていないかと尋ねてみたところ、探し物はまさかの彼の手の中。
それでも、それが『meteorのグッズ』だとバレなければ問題ないか?とほんのちょっとだけ期待したのも束の間、彼は容赦なく核心をついてきた。
……ああ、最悪だ。
「…………うん」
もはや言い逃れできないこの状況。
一瞬で、目の前が真っ暗になった。
最初のコメントを投稿しよう!