第八章 雪女の正体 2.

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「それからしばらくして教員仲間から、お父さんが次の赴任先でお見合いをして結婚したと聞いたわ。なんだか、とっても大切なものを失ってしまったような気持ちになった。後悔してももう遅かったけれど……」  真知子にもすぐに縁談が持ち込まれたという。内陸の町の資産家で、歳は離れているが、真知子の父がとても乗り気になった。 「会ってみたら年上で包容力があって、私もその気になったの。話はトントン拍子に進み、結婚が決まったわ」  しかし結納が終わり、結婚準備をする頃から、夫となる人がかなり嫉妬深いことに気づく。 「二人で入ったお店で私が若い男の店員さんと話すだけで、機嫌が悪くなるの」  結婚に迷いが生じた真知子だが、結婚してしまえば嫉妬も落ちつくだろうと信じ、伊藤家に入る。そこで真知子は、隣家の小野寺家の婿養子となっていた朝陽の父と再会する。 「お父さんはすごく懐かしく思ってくれて、すぐあなたのお母さんにも話そうとしたの……」  言わないでくれと、真知子が口止めしたのだという。 「結婚しても夫の嫉妬深さは変わらなかった。もしお父さんが昔の知人だと知ったら、結婚前のことを調べ上げて変な邪推をして大変なことになると怖かった。その頃は紘子さん、あなたのお母さんのこともまだよく知らなかったから、紘子さんから夫に伝わるのが怖かった……」  理由を話し、父も黙っていることを承諾したという。
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