第三章 知沙 3.

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「うん、懇親会で飲みすぎてたから送って行ったんだ。僕はその時は飲まなかったから」 「なんだ、男の人か。女の人は?」   「まだ誰も――」 「嘘! お見合い相手は乗せてないの?」  知沙の口調は厳しい。 「見合い?」  朝陽が聞き返す。 「おばさんに聞いたよ。地元の人から見合いの話をもらったって」  知沙の不機嫌な理由がわかった。  少し前に、朝陽を気に入った老人の一人が、孫娘を嫁にどうかとそんな話を持ち込まれたことがあった。けれども、母を一人にしてこっちで結婚するつもりはないし、教師として一人前になるまで結婚は考えられないと丁重に断った。  それを知沙は母から聞いたのだろう。まるで浮気の疑いをかけられた夫が弁明するように、一部始終を説明する。 「なーんだ、心配して損した」  憎まれ口をたたきながらも、知沙のご機嫌はすっかり直っていた。
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