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第三章 知沙 4.
知沙は夕方まで自由だと言うので、新しく建設中の巨大防潮堤や震災を追悼して作られた公園、資料館などを案内した。
途中、海鮮丼が美味しい店で昼食にする。二人が店に入ると、土曜の昼の割に店は空いていて、待つことなく衝立で仕切られた四人掛けのテーブル席に案内された。朝陽は奮発して特上を二人分注文した。料理を待つ間、知沙が勤務している保育園の話や母の様子などを聞いている……。
「先生、小野寺先生!」
突然、子供の声で名前を呼ばれた。
声の方を見ると、通路を隔てて斜め後ろの席に、担任しているクラスの生徒の達也とその両親が座っていた。
慌てて朝陽は立ち上がると、達也達の方に近づいて挨拶する。知沙も立ち上がって席から会釈した。
「先生、かのじょーー?」
達也の大きな声が、店内に響く。
「あ、いや、友達だよ。幼馴染が遊びに来たんだ」
「ふーん、ほら! やっぱり友達だって! 彼女じゃなかったよ!」
達也は両親に向かって、自分が正解だとばかりに威張って宣言する。
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