第三章 知沙 4.

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 単身者用の二間にキッチンがついたアパートだった。  知沙を中に通した朝陽は、居間に乱雑に置いてあった脱いだままのシャツや新聞、雑誌をベッドのある奥の部屋に放り込み、慌てて奥の部屋との間の襖を閉めた。 「へえ、意外と綺麗にしてるんだね」  知沙が物珍しそうに部屋を見回す。 「麦茶でいい?」  一つだけある座布団に知沙を座らせると、キッチンの冷蔵庫から麦茶を出してグラスに注いで持ってきて、テーブルに置いた。 「友達とは何時に約束? 車で送ってくよ」  雑談のあと、時計を見て朝陽が聞く。電車の本数が少ないし、車の方が楽だろう。 「嘘なの」  ぼそっと知沙がつぶやく。 「え?」 「友達と会うっていうのは嘘なんだ。彼女、転職してO町から仙台に引っ越したから」 「じゃあ、なんで……」 「朝陽に会いに行く口実だったの。だって、本当のこと言ったら、お母さんが駄目って言うから……。それに、朝陽だって来ていいって言った?」 「……」  朝陽は返答に困った。
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