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第四章 トラブル 2.
その夜は、カレンに新規客の指名が入った。
他のドライバーは出払っていたので、朝陽の住む町に唯一あるラブホテルまで朝陽が車を出した。高速のインターを降りたところにある、いつものラブホテルだった。
「じゃあ、先チェックしてきます」
カレンを車に残して、朝陽はひとりでラブホテルに入って行った。
自動支払機なんてない、入り口を入ると小さなフロントの奥に店番のおばちゃんがいるような、古い作りのホテルだった。
「どうも、人妻倶楽部、301です」
受付に声をかける。
「あら、今日は兄ちゃんなんだね。お疲れ様」
フロントには曇りガラスがはめられており、下部に料金と鍵を受け渡す小さな窓が開いていた。お互い顔が見えないようになっているはずなのだが、実はおばちゃんの方からは見えているようで、朝陽もすっかり顔を覚えられていた。
おばちゃんの声を背に、エレベーターホールに向かった。エレベーターで3階へ行き、301の前でノックすると、しばらくしてワイシャツ姿の男が顔を出した。三十代後半か、サラリーマン風の柔和な顔の男だった。
「人妻倶楽部です。ご依頼ありがとうございます」
「なんだい、嬢はまだかい」
「はい。一応最初に中をチェックさせてもらって、先に料金をいただきます」
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