第四章 トラブル 2.

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 待ち時間は自由だ。女の子がいる場所の近くに停めた車の中にいれば、何をしていようと構わなかった。しかし、店や女の子からの連絡に気づかないのはさすがにまずいので、仮眠だけはしないようにしていた。  朝陽は助手席に置いていた保冷バッグから、母が作ってくれた夜食のおにぎりを取り出した。  その時、スマホの着信が鳴った。多田からだ。事務所との連絡はメッセージアプリを使っているので、電話というのは珍しかった。 「朝陽、トラブルだ。今すぐホテルに入ってくれ。カレンからヘルプが来た」 「え?」 「チェンジとかそんな話じゃないみたいだ。とにかくカレンを連れ出してくれ!」 (あの穏やかな客が?)  朝陽は信じられなかったが、スマホを掴み、急いで車を降りた。 「頼む! カレンを助けてくれ」  スマホから聞こえる多田の必死な声には、多分に私情が含まれていた。
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