第五章 見合い 1.

1/3
前へ
/100ページ
次へ

第五章 見合い 1.

 お盆が明けて最初の土曜日。  朝陽は仕事で朝帰りして、昼過ぎに目が覚めた。今日は知沙の見合いの日だ。それがわかっていたからか、起きる時間がいつもより遅くなった。 (不貞寝だな……)  ベッドから起きあがる気にもならず、しばらくゴロゴロしていると枕元のスマホが鳴る。見ると多田からだった。 「もしもし」 「朝陽、お疲れ! ところで今夜暇か?」  今夜は仕事は休みだった。 「ああ、はい」 「じゃあ、ちょっと付き合え。7時に本町の『ラ・フェスタ』だ。この前の埋め合わせだ」  出勤してくれという連絡かと思ったら、この前カレンを助けたお礼に食事をご馳走してくれるつもりのようだ。  しかし、多田に連れていかれるのはいつも居酒屋ばかりだ。本町の『ラ・フェスタ』はこのあたりじゃ真っ当なピザやパスタ、それにパエリヤなんかが食べられると評判の洋食店で、若いカップルや女の子同士の客が多い店だ。もちろん、朝陽は足を踏み入れたことはない。  いったいどうしたのかと不思議だったが、どうせ暇だから素直に誘いを受けることにした。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加