第五章 見合い 2.

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 たまたま美久の家に兄の友人が集まって飲んでいたときに多田もいて、朝陽が地元に帰ってきている話を聞いた美久がぜひ紹介してほしいと言い出したのだという。 「お前のまわり、女っけなさそうだしな。まあ、この前の穴埋めってことで、あとは二人だけで……」  そう言って多田が立ち上がるので、朝陽は慌てる。 「えっ、先輩」 「俺、仕事だからさ、じゃあな。帰りは美久ちゃん送ってやってくれ」  そう言うと、多田は店を出て行った。  突然、ほぼ初対面に近い女性と二人きりにされて、朝陽は戸惑った。しかし、美久の方にはそんな様子はなく、積極的に話してくれるので助かった。  車なので朝陽はノンアルコールのビールにしたが、美久には飲んでいいよと言うと、「じゃあ、遠慮なく。先輩が送ってくださると思うと安心」とにっこり笑って赤ワインを頼んだ。  料理も美久の好みを聞きながら頼むと、お互いの仕事の話になった。  美久は父親が経営している不動産会社で事務をしているという。『玉田不動産』といえば、駐車場やアパートの敷地の看板でよく目にするから、朝陽も知っていた。
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