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(まさか、デリヘルのドライバーなんて言えないしな……)
自分の仕事をなんて言おうかと困っていると、美久の方から言い出した。
「朝陽先輩は、学校の先生を辞めて、今は多田先輩の事業を手伝ってるって聞きましたよ」
(事業……?)
「あ、うん、まあ……」
「飲食業のプロデュースって、面白そうですね」
とんでもない大嘘をついている多田に呆れはしたが、といって否定するわけにもいかなかった。
運ばれてきたピザを食べながら、しばらく高校時代の話で盛り上がった。美久は飲める方らしく、赤ワインのあとはシャングリラ、カクテルと頼んでいた。
少し酔ったのかほんのりと赤くなった顔の美久は上目遣いに朝陽を見る。
「先輩、ほんとにお付き合いしている方はいないんですか?」
「え、うん」
「やったー。じゃあ、私が立候補してもいいですか? 私……」
しかし、その後の言葉は朝陽の耳に入らなかった。人の視線を感じて入り口の方を見ると、スーツ姿の男にエスコートされるように知沙が入ってきたのだ。知沙の方が先に朝陽に気づいていたらしく、一瞬二人の視線が絡み合った。
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