第六章 焦燥 2.

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「お父さんの葬儀に参列した時に、おそらく隣家の真知子先生は手伝いでいたはずなんだが、人が多くて気づかなかった」  もっと早く気づいていれば……そう高橋は言った。 「二人のことが原因なんだね?」    そう聞かれて、朝陽は観念したように肯いた。 「あの夏、校庭で開かれた盆踊りの直会で、昔の写真を見せてもらいました。若い頃の父と隣の真知子おばさんが睦まじげに並んでいました。なのに、父は母に真知子おばさんを結婚前から知っていることを話していませんでした。真知子おばさんもです。それはつまり……」 「それは違う」  高橋は即座に否定した。 「確かに結婚前、小野寺がうちの市にいた時、真知子先生と仲良くしていたのは事実だ。けれども、君のお母さんと結婚したあと二人には何もなかった。それは私が保証する」  確信に満ちた声に、朝陽は思わず反論する。 「でも、先生と父はその頃は勤務地も違い、年に数回しか会うこともなかったはずです。どうして、断言できるんですか?」
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