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多田はデリヘルの店長を続けながら、カレンをママにしてバーも経営するのだという。前に多田が美久に“飲食業のプロデュース”と職業を騙っていたのは、あながち嘘ではなかったわけだ。
今のデリヘルのオーナーが多田とカレンを気に入って、出資してくれるのだそうだ。陽気なカレンがママなら店はきっと繁盛するだろう。
そう伝えると、カレンはにっこりしたあと、真顔になってバックミラー越しに朝陽を見た。
「朝陽君も、そろそろこの先のこと考えなさい。ずっとこの仕事をしていくつもりじゃなかったんでしょ? 徹ちゃんは絶対引き止めるだろうけど私がなんとでもするから、真剣に考えてみなさいね」
カレンからの言葉が、朝陽の心に残った。
ホテルに着くと、いつものようにカレンを車に残して朝陽が先にホテルに入る。
受付のおばちゃんに断り、客が待つ部屋へ行くと、カレンのお馴染みで朝陽もよく知る客だった。いつものように一通りチェックはするが、問題を起こすような客でないのはわかっていたので料金を受け取ると「すぐ、カレンさん呼びます」と言って部屋をあとにした。
「島村さんでした」
車に戻り、カレンに告げる。偽名だろうが、この店では島村と名乗っていた。
「あ、島ちゃんか。ありがとう。行ってくるね」
カレンが朝陽と入れ替わるようにホテルに入っていった。
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