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第六章 大切な人 2.
「知沙……!」
思わず声が漏れた。
すれ違った車をバックミラー越しに見ていると、高速道路の高架下のトンネルには入らず、手前で左折した。
その先は行き止まりで、ラブホテルしかない。
二度目のデートで見合い相手をホテルに? しかもラブホテルって、相手の男はどういうつもりなんだ。
知沙が安く扱われている気がして、怒りでカッと血が上った。
しかし、本人同士が了解し合っているなら、部外者の朝陽に止めることはできない。割り切るしかなかった。
「今の車見た?」
ところがカレンの方が朝陽に話を振ってきた。
「あの車、ブルマンのよ」
「ブルマン?」
どこかで聞いた気がした。
「電話で予約入れる時に、自分でブルマンって名乗るのよ。青山で、ブルーマウンテンだから、略してブルマン。県会議員の青山って人の甥っ子でさ、ゆくゆくは伯父の地盤を継ぐらしいよ……」
カレンが苦笑いする。
ブルマン? 最近確かに聞いた。
「寧々ちゃんにご執心でね、俺が伯父の跡を継いで議員になったらお前を愛人にしてやるとか、俺の車は県内に1台しかないとかもう自慢がすごかったって……」
カレンは苦笑いしている。
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