27人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
第六章 大切な人 3.
「なんだ、君は」
青山が朝陽の前につかつかとやって来て怒鳴る。
「彼女の知り合いだ。今、車ですれ違って追ってきた」
「何か問題があるのか。僕と彼女は結婚前提に付き合っている。邪魔される筋合いはない」
「彼女は嫌がってるんじゃないのか? まだ会って間もないのに、無理やりは卑怯だ」
「結婚を急ぎたい事情があるのは彼女の方だ。それに、これは同意の上だ。そうだよね?」
青山は平然と言うが、知沙の弱みに付け込んでいるのは明白だった。
「そうなの?」
朝陽は知沙に聞く。
知沙はいやいやをするように首を振る。
「食事のあと、少しドライブしようって車に乗ったらここに……」
信じて欲しいというように、朝陽を見上げて続ける。
「結婚を急ぎたいなら、婚約前に相性を確認したいって……」
そう言われて車から降ろされ、強引に連れ込まれようとしていたと言う。
「なんだそれ。お前、変態か」
思わず朝陽は変態という言葉を使ってしまい、しまったと思う。青山の顔が怒りで真っ赤になった。
「付き合っている彼女とどこへ行こうが自由だろ。お前は彼女のなんなんだ」
最初のコメントを投稿しよう!