第六章 大切な人 3.

2/3

27人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
「幼馴染だ。彼女を……彼女を大切に想っている」  朝陽はそう言い切った。  知沙がはっとして朝陽を見上げるのがわかった。 「どうなるかわかってるのか? 俺の顔に泥を塗ったら、この町にいられーー」  その時、駐車場側の出入り口に人影が見えた。カレンだった。  カレンは一仕事終えて来たという様子で鼻歌を歌いながら出てきて、そこで朝陽達に気づいたという風を装う。そして、青山をまじまじと見つめた。 「あら? あんたブルマンじゃない? 」  それから朝陽や知沙を見る。 「あらあら、お取り込み中? あんた、うちの店出禁になって、他の店のデリヘル嬢とトラブルでも起こしてるの? 伯父さんが県会議員だかなんだか知らないけど、いい加減にしないと後継者指名から外されるわよ」とまくし立てた。  青山は今度は羞恥心で顔が真っ赤になるが、言い返せない。 「これ以上ことを大きくしたら困るのはお前の方じゃないか? 知沙は連れて帰る。いいな」  朝陽が言う。 「ふん。そんな女、こっちからお断りだ!」  青山は息巻くとその場を立ち去り車に乗り込んで、猛スピードで走り去っていった。 「朝陽……」  知沙は朝陽にしがみつく。朝陽はそんな知紗の頭越しにカレンを見る。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加