第六章 大切な人 3.

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「カレンさん、助かりました。ありがとうございました」 「いいのよ。これであの時の埋め合わせになったかしら?」  そう答えると、カレンはにっこり笑った。  その後、朝陽は自分の車の後部座席に知沙とカレンを乗せると、カレンを事務所に送って行った。 「申し訳ないけど、まず私を事務所に送って。それで朝陽君は彼女と帰りなさい。送迎は徹ちゃんがやったらいいんだから。私が話しておくからね」とカレンが言ってくれたのだ。  車の中で、朝陽が知沙にバイトの内容を説明した。  もとから知沙は夜警のバイトという朝陽の話を疑っていたようで、その上カレンがいかに朝陽が真面目に働いているかを説明してくれたので、知沙もそれについては納得したようだった。  多田に話しに行くのに事務所前で降りたカレンは、もうすっかり知沙と打ち解けていて、「ほら、知沙ちゃん、助手席に移りなさい」と指示まで出している。  知沙が窓を開けると、カレンは窓越しに、「結婚式するから、知沙ちゃんも朝陽君と来てちょうだいね」と言う。 「はい。伺います」  知沙が答えると、カレンは満足そうに二人に手を振り、事務所のあるビルへ入って行った。
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