27人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
第七章 大切な人 5.
「懐かしいな」
朝陽は知沙の家でまず愛犬の太陽の熱烈な歓迎を受けたあと、一階のリビングルームに入った。
最後に知沙の家を訪れたのは小学生の高学年の頃だったろうか。
知沙の父の身体が不自由で、家の中でも杖をついてゆっくり歩いていたほどだったから、椅子に座れるよう部屋は洋室に改装されていた。革張りのソファとテーブルがあり、隣のキッチンとつながっている。
ソファもサイドボードも昔のままだ。それなのに思っていたより小さく感じるのは、朝陽が大きくなったからだろう。
「座って待ってて。今、ゲーム持ってくるから」
知沙はそう言うと、二階の自分の部屋に上がっていった。
真知子に持っていくのだろうか。バスタオルやタオルが綺麗に洗濯され折り畳まれてテーブルの上に置かれていた。横にはメモがあり、りんご、うがい薬、女性向けの雑誌名など、真知子に頼まれた品物がリストになっていた。
部屋を見回すと綺麗に片付けられており、真知子が入院してしばらく経つ中、知沙が一人で頑張っている様子が見てとれた。
――ワォン、ワォンーー
足元で太陽が、『一人じゃない、僕も頑張っている』とでも言うように吠える。
「ごめん。そうだよな。お前が知沙を守ってくれてるんだったな」
朝陽がそう言って撫でると、太陽は満足したように朝陽の足元に伏せた。
最初のコメントを投稿しよう!