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けれども……。どうしても、知沙が妹とは思えなかった。かつては幼馴染として妹のような存在だった。しかし、今は一人の女性として、知沙を愛していた。真実を知るのは怖いが、それでも真実が知りたかった。
そんなことを考えながら、いつの間にか朝陽も知沙から漂う甘い香りに包まれて眠ってしまった。
「朝陽、起きて! 朝陽!」
知沙の声に、朝陽は目を開くが、半分夢見心地で知沙の髪の毛をいじっていた。
「そろそろ明るくなるよ」
その言葉に現実に引き戻される。
夜が白み始めれば、毎朝の日課で朝陽の母は庭に出る。朝陽の車が知沙の家にあれば、どんな誤解をするとも限らない。
「知沙、帰るから、真知子おばさんに聞いておいてくれ」
「うん。わかった。午前中に病院行くから、話してみるね」
朝陽は知沙に見送られて玄関を出て、車に乗り込む。
「朝陽、ありがとう」
声には出さず口の形でそう告げる知沙に朝陽は手を振りエンジンをかけると、隣の自分の家の敷地へ静かに車を動かした。
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