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第八章 雪女の正体 1.
朝陽が家に戻ると、母がちょうど起きてきたところだった。
「おかえり。今日は早いのね。何か食べる?」
まだ六時前だった。仕事なら六時を過ぎるので、確かに少し早かった。
「ううん。ちょっと寝るわ」
真夜中にカップラーメンを食べたので、お腹はいっぱいだった。朝陽は母におやすみと言うと、二階の自分の部屋に上がる。
まず、多田にメッセージを送った。昨夜は勝手をさせてもらったので、今日は休みだったが出勤するつもりだった。
――カレンから聞いてるよ。今日は足りてるから、明日頼む。可愛い彼女だってな。今度会わせろよ。お疲れ!――
そんな返事がすぐ届いた。
それを確認して少し寝ることにして、朝陽はベッドに横になる。
知沙を愛おしいと思う気持ちはもう抑えきれなかった。しかし、知沙と結ばれるためには、その前に真知子と話し、真実を明らかにするという難題が待ち構えていた。
病に倒れ、緩和ケア病棟に移った真知子には時間がない。真知子はこのまま真実を墓場に持っていくつもりではないのか? そんな真知子から話を聞けるのだろうか? 無理に話を聞いていいのだろうか? 不安だった。
昼前に目が覚めた朝陽が庭で洗車をしていると、知沙のピンクベージュの軽自動車が戻ってきた。知沙も朝陽に気づいたようで、自分の家の敷地に車を停めると、朝陽の家の方に歩いてくる。
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