第八章 雪女の正体 2.

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第八章 雪女の正体 2.

「でも……。それは朝陽君が思っているのとは違うわ」  朝陽の哀しげな表情を見て、真知子は続けた。 「今日、知沙と話して、あなたがもしかしたらお父さんのことを悪く考えているかもしれないと気づいたの。私のせいね。でも、あなたのお父さんは、最後まで立派な方だったわ」  朝陽は真知子に反論する。 「真知子おばさんと父は結婚前知り合いで、お付き合いもしていましたよね。でも、そのことを父は母にも内緒にしていた。そしてあの夜……。どこが立派だったんですか?」 「それは違うの。まったく違うのよ……」  それからしばらく沈黙が続いたあと、真知子は昔のことを語り始めた。 「お父さんとは、確かに結婚前、あの海辺の街で知り合い交流があったわ。公立の小学校や保育園の教員同士のグループ交際から発展して、二人で映画に行ったり、ドライブに行ったりしていたの」  やはり、父と真知子は交際していたのだ。 「正直に話すと、お父さんから結婚を前提に付き合いと言われたわ。でもね……」  真知子は顔を曇らせる。 「私の父が反対したの。私の父は、娘の結婚相手には教師という職業ではなく、財力が大切だと考えていた。私は若くて、父に反抗する勇気はなく、父の言葉に従ってしまった……馬鹿だったわね」  真知子に断られた父は間もなく異動になり、真知子の前から姿を消した。
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