第八章 雪女の正体 3.

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 真知子が姿を消せば、夫が五歳の知沙の世話をするのは無理だった。そこで小野寺家で預かると申し出ると、朝陽の父が約束してくれていた。知沙は朝陽と兄妹のように育ち、朝陽の父と母にもよく懐いていたから、置いて行っても心配ないだろうと判断した。  真知子はひとりで家を出て、車に乗り山の家に向かった。子供会で何度も利用しているので、迷うことはなかった。  夜半から山は吹雪いていた。 「夜遅く、山の家に着いて、外からお父さんを呼んだの。ところが……」  応答はなく、不審に思った真知子が扉に手をかけると鍵はかかっておらず、真知子はそっと扉を開け中に入った。  すると、火が消えた囲炉裏の向こう側に敷かれた布団で朝陽がぐっすりと眠っており、囲炉裏の手前の布団には朝陽の父が眠っていた。 「何度も名前を呼んだけれど、お父さんは起きないの。それで近くに行って、身体を……」  ゆすっても反応がなく、手首で脈を測ろうとするが、既に脈拍もなく、息もしていなかったという。  真知子は心臓発作か脳梗塞かと考えた。既に身体は冷え、死後硬直も始まっていたが、慌てて人工呼吸を施す。
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