第八章 雪女の正体 3.

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 その時、朝陽が気配に目を覚まし、「雪女だ」とつぶやくのを聞いた。 「朝陽君、ごめんなさい。お父さんの命より、朝陽君に見つかり、ことが公になるのを私は恐れ、自分の身を守るのを優先させたの。朝陽君が雪女って思ったのは、午前中の子供会で紙芝居を見たからよね?」  朝陽は肯く。 「覚えてる? あの紙芝居、私が読んでいたの。それで、咄嗟に朝陽君にあの時の声、セリフで『今は助けてやるが、もし誰かに今見たことをしゃべったら同じ目に遭わせてやる』って脅かしたの。ひどい大人よね……ごめんなさい」  真知子は夫から逃げるのを断念した。  父の死が発覚した際に、真知子の出奔と結びつけられる可能性が捨てきれなかったからだ。 「こっそり家に戻ると、夫は眠っていたわ。運良く見つからずにすんだの」  山の家を往復した真知子の車のタイヤ痕は吹雪ですぐに消され、父の死もきちんとした鑑識は行われずに病死と判断されたので、真知子と朝陽の父の死が関連づけられることはなかった。
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