第八章 雪女の正体 4.

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第八章 雪女の正体 4.

「でも……」  第一発見者として、救急車を呼ぶべきだったと真知子は悔やむ。父の死後、真知子は朝陽の母と深い信頼関係を築いていたので、余計に罪悪感を捨てきれなかった。 「なぜ父だったのですか……? 母が友人だったなら、なぜ父ではなく、母に金を貸してと申し込まなかったのですか?」  朝陽はそこが不思議だった。母だって、力になろうとしただろう。 「それは……」  真知子は最初は言い淀んだ。しかし、観念したように口を開いた。 「軽蔑されてもしかたないけれど、正直に話すわ。私はその頃、紘子さん、あなたのお母さんに嫉妬していたの。優しい旦那さんに愛されて幸せそうな紘子さんを妬んでいたわ。だから……」  真知子は朝陽から顔を逸らさずに続けた。 「山の家に行ってあなたのお父さんにお金を借りる際、一緒に逃げてと誘おうと思った」    それから、真知子は自嘲気味に続けた。 「もしお父さんが生きていたとしても、断られたと思う。でも、あの時の私はおかしくなっていた。自分の境遇と、紘子さんの幸せを比べて勝手に紘子さんを恨んでいた。優しい夫を、本当なら私のものになるはずだった人を奪ってやろうと考えた……」  けれども父の死後、朝陽の母に対する真知子の気持ちには変化が生じたという。
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