27人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
真知子の四十九日を終えたある晩、知沙が伊藤家のリビングルームのテーブルに絵本を広げていた。風呂から上がった朝陽は、ソファで絵本を前に考えている様子の知沙の隣に座る。
「なに、悩んでるの?」
「明日、クラスで冬のお楽しみ会をやるのに、なんの絵本を読もうかなって」
「へえ……」
絵本の中には、朝陽が子供の頃親しんだ『手袋を買いに』『かさじぞう』などもあった。そして……。
朝陽は一冊の絵本を手に取る。『ゆきおんな』だった。
「これって、最後はどんな終わり方だっけ?」
知沙に聞いてみる。知沙は甘えるように朝陽の膝の間に座ると絵本を広げ、「最後、雪女は溶けてしまうんだよ」と答える。
「雪女は成長した男の子と結婚して、子供を産むの。それで男はつい奥さんに、あの夜の話をしてしまうの」
それから知沙は、絵本の最後の部分を読み始める。
ーー「誰にも話さないと約束して助けてやったのに、お前はとうとう他人にあの夜の話をしたな。私こそあの夜の雪女だ。私はお前を殺さなくてはならないが、お前との間に子供が生まれた今となってはそれもできない。お前は子どもをしっかり育てるのだ。そうしないと今度は本当にお前を殺しにくるぞ」
雪女はそう言うと、あっという間に白く溶けてしまいました。
おしまい ーー
知沙は読み終わると絵本を閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!