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中へ入ってみると、少し雑然とした木のカウンターと、3席のテーブル席。こじんまりとしており、木でできた椅子は座るところだけ革張りで、それもかなり使い込まれているのだろう、かなりくたっとしている。
店の中には先ほどの女の人と、白髪の紳士がカウンターにおり、その紳士とカウンター越しに話し込んでいるこれも初老の男性がいるだけだった。
観葉植物で仕切られたテーブル席に座り、メニューを見てみる。想像よりもリーズナブルな金額設定で、安心した。
ホットコーヒーを注文して、今日のお供である文庫本を鞄から取り出す。最近はまっているシリーズ物の3巻目だ。全7巻なので、まだまだ楽しめる。そうほくそ笑みながら読み始めると、コーヒーが運ばれてきた。
「お待たせしました」
テーブルの上にカップを置き、少し間があってから、
「私もそれ好きなんです。今5巻目なんですけど、ますます面白いですよ。楽しみにしてて下さい。あと、うちのマスターも本好きなんで、気にせずゆっくり読んで行って下さいね」
そう少し首を傾げて笑って言う。
天使がいる
特別可愛い訳でもなく、綺麗系でもなく、化粧も最低限で、服装だって普通。
クラスでも真ん中位のレベルだと思う。しかし、田中にとっては後光が射して見える気がした。恋に落ちるというのは、落とし穴に前触れもなく落ちるようにスコーンと落ちてしまうんだな。と落とし穴に落ちたことも無いのに思った。
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