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あれから何度か店に行ってはいるのだが、あの時以来、挨拶以上の話をした事がない。こちらからタイミングよく話しかける等という、高等なスキルを持ち合わせていない為、結局居座って読書をするだけの客 という立ち位置から脱却できない。この現状を打破するためには、強制的に向こうから声をかけてもらわなければならない。どうしたものか…。
結局何の進展も無いまま、ついにシリーズの6巻目まで読み終えてしまった。本屋で7巻目を購入し、店を出ると
「お客様、お忘れ物ですよ」
と本屋の店員が、田中がレジカウンターに置き忘れてきてしまった本を、走って持って出てきてくれた。
「あ、すいません」
ペコリと頭を下げて本を受け取った時に、閃いた。
そうだ、これだ。忘れ物をすれば、向こうから声をかけてくれる。
上手くいけば、お礼にご飯でも とか 誘えるんじゃないか。
いや、ご飯は無理でも、話すきっかけになるかもしれない。最初だって、向こうの趣味に合う物を持っていたから、向こうから話しかけてくれたんだし。
そうと決まれば、彼女の趣味に合って、尚且つ好印象を持たれる忘れ物をしなければ…。
田中の計画的忘れ物作戦の必勝アイテム選びが始まった。
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