計画通りの忘れ物

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髪の毛OK 服装OK  これさえ飲めばイケメンになれるというサプリでもあれば飲むが、それが望めない現状では、このレベルが自分の限界だ。 気合を入れ過ぎない様に、不自然に見えない様に注意しながら、アカシアのドアを開く。 会社も学歴も家庭環境も外見もそこそこ。 平凡のお手本とも言えそうな 田中 樹(たなか いつき)25歳が恋におちたのはつい2か月前。 週末、家の近所のカフェで読書を楽しむのが唯一の趣味だったのに、その日に限って人が多く、居心地が悪そうだったため、新天地を求めていつもは行かない方向へ、当てもなく散歩がてら歩いてみた。 すると、ちょっと路地に入ったところに年季の入った木のドアが印象的な「純喫茶 アカシア」が現れた。 純喫茶…純粋な喫茶店っていう意味か?今までチェーン展開しているカフェにしか行った事のない田中は、店に興味があるものの、敷居が高すぎてそのドアの前で入るのを躊躇していた。その時 カランカラン 鐘の音と共に、高齢の紳士がドアを開けて出てきた。 あ、ヤバいぶつかる。 そう思って体を避けると 「ありがとうございました。また来て下さいね」 と言って紳士を見送りに来た女の人と目が合った。 「あ、いらっしゃいませ」 ニコっと笑いながら、どうぞ という様にドアを開けて待ってくれている。 これはもう入るしかない。 小さく どうも と 言いながら、未知の純喫茶へと足を踏み入れた。
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