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る時、彼女に電話すると「あんたなんかとは口もききたくない」と言って電話を切った。
でもショックもうけなかった。だってそれだけ離れてしまったから。
それから何年も何年もたって、元子は神戸三ノ宮の花電車の前でストリートピアノ弾いてる吾人がいるのに気付いた。曲はビートルズの「レットイットビー」
「うわあ、懐かしいなあ」彼女は立ち止まった。
そして演奏を聴いて気づいた。
「あれ、この演奏は、六郎君!」
見たらその通り、なんと僕がストリートピアノ弾いてたんだ。
演奏が終わって言葉を交わした。
「久し振り、まだピアノ弾いてるの?」
「うん、ジャズも弾いてたんだ。元子ちゃんは弾いてるの?
彼女は首をふった。
「ええ?勿体ない!あれだけ弾けたのに」
「そうよね」
「一緒に練習しない?」
「どこで?」
「例えばここ、ストリートピアノとか」
「でも全然弾いてないから何を弾こう」
「ショパンの練習曲10-3」
「あれ難しいやん。しかも題名が『別れの曲』
「いやあ、別れは出会いの元なのさ。」
こうして二人は音楽教室でピアノ連弾の練習を始めた。
この人が一番好きな人なんだ。
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